「日医標準レセプトソフト」はこんな風に使われています。

転載記事
第七回「1人の命を大勢で守る基盤に〜連携の強固な地域ネットワーク下で〜」 医療法人社団友愛会岩砂マタニティ/岐阜県医師会/岐阜県医師会協同組合/JRCエンジニアリング
岐阜市では、昨年全国医療情報システム連絡協議会が開かれました。2001年経済産業省プロジェクト「岐阜市における電子カルテを中心とした診療ネットワークの構築」のネットワークは県全域に広がろうとしています。また、偽造を防止する処方箋に一斉に切り替え、さらには中部全域で販売するなど、医師の立場でベンダーに交渉を続けてきた岐阜県医師会協同組合が窓口になって、ORCAプロジェクトを推進しています。先導的な役割を担い続けてきた岐阜県医師会会長・岐阜県医師会協同組合理事長・日医医療情報ネットワーク推進委員会委員長で医療法人社団友愛会理事長の岩砂和雄氏、医療法人社団友愛会岩砂マタニティ院長の岩砂眞一氏、医療法人社団友愛会岩砂病院の岩砂三平氏に聞きました。

ベンダー
ジェイ・アール・シーエンジニアリング株式会社岐阜事業所
サポート地域:岐阜/愛知/三重/石川/福井/滋賀/京都/大阪
東京からのサポートを続けていたJRCE東京事業所だが、地域のニーズにさらに応じるために、昨年9月、2つ目の事業所を立ち上げた。将来的には中部全域をサポートしていくが、まずは拠点である岐阜県内のサポートに、医事コンメーカのサポート経験を持つ2名を中心とした5名の体制で、あたっている。すでに4件が本稼働しているが、準備中の医療機関もいくつか抱えている。JRCE全体としては、すでに47件の本稼働があり、4月までにこれに11件が加わる予定だ。岐阜に続き昨11月には静岡事業所も開設し、今後も普及状況に応じて手厚いサポートを行うための事業展開をしていく。
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医療情報のネットワーク構築と標準化の基礎として
岐阜県下での日医標準レセプトソフト(日レセ)稼働は2004年2月現在で7ヵ所、そのうち、岩砂マタニティを含む2ヵ所が19床以下の有床診療所である。
ORCAプロジェクトは、単なるレセコンの開発ではなく、その先にある電子カルテにつながる医療情報電子ネットワークへのデータ活用を実現する。ORCAプロジェクトでカルテ1号用紙が全国的に標準化されてくれば、そこに必要なデータを添えるだけで紹介状を作成でき、電子情報としてそのまま送信することもできる。したがって、相手先は同じデータを再構築する必要はない。また、逆紹介の際にも、その方法を踏襲することができるのである。電子カルテとの接続も可能なので、接続すれば同一作業の繰り返しがさらに不要になる。もし、データの標準化を特定のレセコンメーカで行えば、自社製品の囲い込みが起きてしまう。ところが、これを日医主導で行うことにより、囲い込みを防ぐばかりか、今後はメーカも追うかたちをとっていく方向にある。
患者にとって大きな利益となるのは、医療情報データを電子化して保存してあれば、患者の同意を得た上で医療機関がそのデータを保有することができることだ。わざわざ電子カルテを使っていなくとも、退院サマリ・紹介状の情報データを集積することで、当該患者の病歴が形成されていく。そうすれば、同じ検査は不要になり、過去のデータも自在に取り出すことができる。
岐阜県では、かねてより、医療連携は盛んだった。土壌はできていたのである。大学病院と医師会との関係も友好的なので、なおさら追い風となる。99年に完成した岐阜地区総合医療情報ネットワークが、1ヵ月後には岐阜大学病院と専用線で接続した。現在はこれに、岐阜病院(構築中)、下呂温泉病院、多治見病院の3県立病院の参加が進行中である。ここに、岐阜市民病院も接続する予定である。ここでは、電子カルテを中心とした診療ネットワーク構築の合意ができている。つまり、電子紹介状や電子サマリをやりとりすることで、この地域での標準化をめざす。さらに、今年6月には、ベッドサイドまで光回線が張り巡らされた岐阜大学病院が新築移転・開院する。こうして、この地域で医療情報ネットワークが標準化されると、電子的なやりとりは不可避となる。さらに、これが全国規模へと拡大すれば、標準語としてのORCAプロジェクトがますます重要になってくる。
岐阜県医師会では、日医がORCAプロジェクトを推進することで医療情報の標準化を行い、患者の同意を得て電子カルテに接続することによって全国的な医療情報交換を実現する、という理念に賛同し、ORCAプロジェクトの普及を進めている。
「その理念は、医師会や医師個人のためのものではなく、“日本の医療をよくしていこう”という大きな流れに乗っています。医療情報は今後共有・交換されるものとして扱われていくでしょう」(岩砂和雄氏)
そればかりではない。レセコンメーカへの高額な支払い明細が不明瞭だったのに対し、日レセはその経費を明確で格安なものにしている。さらに、今後は投薬などの基本的な標準化を図り、例外的な処方には手動で文書を添えるといった禁忌への対応を可能にしたり、経費の調査への応用をしたり、といった期待も寄せている。
もちろん、岩砂病院(115床)への導入も検討中である。
費用的にも無理のない地に足の着いたシステム
岩砂病院では、独自に開発したシステムを運用している。紙に書いて転記する手間と転写した紙をなくすため、指示を、ミシン目で3等分されるA4用紙に、カルテ用・事務所用・薬局用と一括して印刷したり、薬剤指示をラベルシールに印刷することで紙カルテに貼付したりしている。また、患者サマリのシステムも動いている。
「このシステムは安易にパッケージソフトを一括導入したのではなく、9〜10年かけて段階的に、しかもコストパフォーマンス良く完成させました」(三平氏)
まず、最も患者サービスとなる検体検査データ管理システムを根幹システムとした。そして、心電図データを付加し、画像データも段階的に導入した。院内のものは直接取り込み、他の医療機関から送られてきた画像もデジタル化して蓄積してある。また、紹介先にも閲覧可能なPDFファイルにして、紹介状と一緒にCD-ROMを患者に渡している。
この病院では、まず、院長である三平氏が率先してキーボードを叩いていたため、職員にも動機付けが浸透していた。したがって、最も大きな障害となるキーボードアレルギーを起こすこともなかった。そして、各科のデータを別個に保存することで、責任の所在を明確にして信頼性と安全性を高め、不要なボタンは表示しないなどの工夫を凝らし、誤操作をしない仕組みにした。
システムを活用することで、患者の興味を喚起できれば、医師もうれしい。ともかく、医師が“安心して使えるシステム”にすることが肝要である。このため、運用しながら必要な機能を追加してきた。もし、一気に導入すればハードウェアの寿命も一斉にやってくる。ところが、徐々にシステム適用範囲を広げていくと、古いCPUでも補助的には十分に機能するため、この13年間で廃棄したハードウェアはほとんどない。こうして、ソフトウェアと医療と、順序立てて小さな成功を重ねていくことで無駄なく構築したこのシステムは、まさに岩砂病院とソフトを開発したセイヨウトレーディングの二人三脚の賜といえよう。
1人の命を大勢の医師の協力体制で守っていくために
03年9月、岩砂病院から産科が独立し、岩砂マタニティがリフレッシュ・オープンした。これを機に、1ヵ月前から日レセの導入を始め、デビッドカードの取り扱いや、診察券発行機とも連動している。
岩砂マタニティの医事課職員は5名だが、岩砂病院とローテーションで担当しているため、岩砂病院のシステムにもコンピュータにも熟達している。日レセとは連動していないが、もちろん、このシステムは岩砂マタニティでも稼働している。岩砂マタニティでは、1ヶ月間と設定して日レセ導入の研修を行ったが、移行期間を長く設定すれば二重入力が発生する時間もそれだけ長引いてしまう。1ヵ月で、と決めたら実行あるのみ、職員は皆協力的だった。
「もともとIT化は進めていたので、日レセの導入で変わったことはありません。逆に、これまで通りのことができています。今後活用の幅は増えるはずです。産科では自己負担額が多額となることもあり、現金を持ち歩くのは大変です。そして、世の中がカード請求の流れにあります。その流れに即し、これからの医療を患者さん中心のものにしていくためには、IT化も必要でしょう」(眞一氏)
また、医療機関にとっても、カード取り扱いの導入は有効だと眞一氏は指摘する。個人を保証するデビッドカードやクレジットカードを導入することで、未払いをなくす。また、将来計画中の保険証のICカード化は、保険を切り替えていない患者を機械的にはじくこともできる。そして、これが汎用化すれば、会計・レセ電算・院外処方へとつながっていく。簡素化・省力化は時代の流れなのである。
一般に使われている携帯電話でも、すでに画像・動画を含む様々な情報のやりとりが実現している。もっと手軽に医療情報のやりとりを行うことで、専門家の診断を迅速に仰ぐことができるようになる必要性を、眞一氏は訴えている。
「1人の生命を医師が個人で、単独でお預かりすることには限界があります。だから、大勢の医師の協力体制で守りたい。そのためにも医療情報の共有は不可欠なのです」
レセコン機能だけをORCAプロジェクトに求めているのではない。だからこそ、できるところからでいいから、保険のことも、コンピュータのことも、ORCAプロジェクトのことも、職員がある程度はわかっている必要がある。どういう方法にしろ、ORCAプロジェクトに参画していくことが医療情報ネットワーク推進の近道である。それが、岐阜県のように、地域で医療情報ネットワークを構築してきたところでは、より明確になっていくだろう。
文・仁科典子


